2002/12/24 ふるさとの宝物 (32) 鳴門市板東俘虜収容所新聞「バラッケ」

けさは、第一次世界大戦中鳴門市の板東俘虜収容所でドイツ軍俘虜が発行していた新聞、「 バラッケ 」をご紹介します。
バラッケは、収容所の生活がどのようなものだったを知る手がかりであると同時に、ドイツ俘虜が当時の徳島の産業、文化に大きく貢献したことを示す、貴重な資料です。

板東俘虜収容所内新聞・バラッケ。
バラッケはここに収蔵されています。
1917年9月30日から2年間発行された新聞で発行部数は毎回300部、すべて手づくりです。
ロウを塗った紙の表面に針で描いてインクを乗せる、いわゆる「 ガリ版 」で印刷されたものです。
おもに 戦争の経過や収容所内の行事報告、周辺地域の紹介などが掲載されていました。
(インタビュー)鳴門市ドイツ館館長・田村一郎さん

鳴門市大麻町。
ここに板東俘虜収容所はありました。

広さは1万2千坪、広大な施設には広大な施設には、中国チンタオで捕えられたドイツ兵およそ1000人が収容されていました。

鉄条網の向こう側から中をうかがう村人たち。 

当時のドイツ人俘虜を語る元収容所職員の映像が、四国放送に残されていました。

(インタビュー)
            大麻町板東 元収容所職員
            林 豊さん当時68
            初めて見る外人
            折り目正しく、すべてに於て日本人と差が

囚われの身を恥とする日本人とは異なり、捕虜であることも勤務の一部であると考えるドイツ兵。
収容所暮らしの間もその士気が衰えることはなく、新聞バラッケには、俘虜たちが収容所で自主的にさまざまな活動をおこなっていたことが記されていました。
なかでもスポーツはもっとも盛んでした。
テニスやホッケー、ボウリングサッカーなどの試合結果が報じられています。
これは1918年5月26日、日曜日、収容所での体操協会創立を記念して行われた競技会の記事です。

(1918 6月2日 第36号 )
「 好天に恵まれ、鉄棒 平行棒、あん馬、跳び箱など、競技は順調に進行した。
ここ極東の地でもスポーツの分野では、野球やサッカーなどイギリスの色濃い影響がみられる。
われわれは、ドイツ流の体操を披露して、ドイツ人の物の考え方はこうだ、ということをわからせよう。
6月1日には、日本人教員ら50人が見学したいと言っている。いまこそわれらの勇姿を 見せてやろう 」

写真中央にみえるのは、当時の撫養中学の生徒です。
柔剣道などの武道しか知らなかった子供たちにとって、俘虜たちのスポーツは大きな衝撃でした。
その後俘虜たちは各地の学校に招かれるようになり、直接体操を指導しました。
新聞バラッケは、ドイツ俘虜が日本の農業や畜産面に重要な役割を果たしたことも記しています。

(1918年3月31日 第27号)
俘虜たちは、収容所の外に設けた農園でキャベツやレタス、トマトなどの西洋野菜の栽培を行い、見学に訪れた村民にそのつくり方を教えました。
また、収容所近くに畜舎を建設し、乳牛や豚、数十頭の飼育をはじめました。
バターやチーズ、ハム・ソーセージの製造など、徳島の新しい牧畜が、ここからはじまったのです。

( 音 トリキリ ) インター船本宇太郎
当時76
牧畜技術を学ぶ点は多かった。
仕事が終わると音楽を楽しんでいた。教養が高い。

新聞バラッケは、ドイツ俘虜が日本の農業や畜産面に重要な役割を果たしたことも記しています。

(1981年3月31日 第27号)

収容所では音楽活動も盛んでした。
合唱団やマンドリン楽団のほかオーケストラは年間30回を超える演奏会を開催、日本人もその輪に加わっていました。
1918年、6月1日。
収容所である演奏会がおこなわれました。

 ( 1918 6月2日 第36号 )

演奏されたのはベートーベンの「第九交響曲」のちにここ板東が、日本で最初に第九が演奏された記念すべき場所であることが、わかりました。

バラッケには第九をたたえる次のようなことばが記されています。

「第九交響曲、それは人類の共有財産であり、無限の時を貫いて人類の行く手に明星の輝きを投ずるであろう」

         第九交響曲合唱(An Die Freude )
         詩 フリードリヒフォンシラー     
「 神の力は 引き離されたものを再び結びつけ
神のやさしい翼のとどまるところ
人々はみな兄弟である。」

ドイツ俘虜が奏でた第九交響曲。
それは、全人類にむけて送られた愛と平和のメッセージであったということをバラッケは伝えていたのです。
第九初演からおよそ80年。
音楽を愛し、音楽を感じる心はいまも多くの人に受け継がれています。

(インタビュー)
  ドイツ館館長・田村一郎さん
血の通った俘虜生活
無味乾燥な戦が繰り広げられているいま平和のありかたを考える資料

板東俘虜収容所内新聞 バラッケ。
ドイツの兵隊が敵国日本に惜しみない友情を注いだことを記すふるさとの宝物です。


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