2002/06/04 ふるさとの宝物 9 ジンジョウユリ
けさは ジンリョウユリをご紹介します。
徳島県内の数カ所と静岡県の一部にしか自生していない
ジンリョウユリは、絶滅がもっとも危惧される植物として
国や県のレッドデータブックにもその名がある植物です。
ジンリョウユリは、ササユリが突然変異をおこしたもので
蛇紋岩(じゃもんがん)という痩せた岩地にしか自生しない世界的にも珍しいユリです。
昭和12年、神山町神領で最初に発見されたことからその名がつきました。
背の高さは、50センチから80センチとユリの仲間では小型です。
多年草で、毎年5月末から初夏にかけて淡い紅色の花をつけます。
笹のように、細く長く伸びた葉もこのユリの特長です。
97年、ジンリョウユリは絶滅が心配される植物に指定され
環境省のレッドデータブックに名前が載せられました。
区分は 絶滅危惧TA類。
絶滅の危険度のもっとも高い部類です。城西高校神山分校技師 片山泰雄さん(神山町神領在住)
私の子どもの頃は田んぼの淵の石垣の間からでも自生地では花がたくさん咲いていた。今は1日歩いても運がよければ目にかかるぐらいで、それも花のついたものはとても見る機会がないと思っている。
ジンリョウユリを絶滅寸前にまで追い込んだ原因のひとつが、山の植林です。
戦後日本の高度成長にともない各地の山々は
住宅資材などにつかわれるスギやヒノキで埋め尽くされました。
くさはらに生えるジンリョウユリは日のあたらない場所では生きてはゆけません。
絶滅に瀕するもうひとつの原因、それは盗掘です。
ユリは純潔の象徴として、また性愛の象徴として旧約聖書にも登場します。
清純さとともに、甘美で怪しい魅力もあわせもつユリは
数も少なく、蘭と並んで古くから多くのひとの心をとらえてきました。
近年の山野草ブームもあって心ないマニアや一部の業者までもがユリを持ち去り、
絶滅にいっそうの拍車がかかりました。
また繁殖力が弱いことも、不利な要因です。
ジンリョウユリは自然に生育した場合、芽が地上に現れるまでに1年、
花が咲くまでに7年もの歳月がかかります。
このため城西高校神山分校では、
93年から、バイオテクノロジーを利用してジンリョウユリの増殖を行ってきました。
ひとつの種から複数の球根を人工的につくり出す、一種のクローン技術です。
これまで9年間で、2700個以上の球根が自生地近くの林に植えられました。
城西高校神山分校技師 片山泰雄さん栽培したものを自然に戻すことに異論があるかもしれないが、絶滅を防ぐためには今ではこれ以外考えられないと思う。
私たちの目には美しく映る自然も、ここで暮らす動植物にとっては厳しい環境です。
城西高校神山分校技師 片山泰雄さん
絶滅危惧植物は人間が作ったもので、全国的世界的に問題になっているがそれを絶滅させたのでは手遅れなので、絶滅する前に助けてやるのが人間の役目だと思う。
人間の手によって、希少植物となったジンリョウユリ。
しかし今、その人間の手を借りなければもはや生きては行かれません。
気高い、その美しさゆえ、絶滅の崖にたたされる花、ジンリョウユリ。
自然との共生をうたう人間にその難しさを教えてくれる、ふるさとの宝物です。