2002/05/21ふるさとの宝物 (7) 鳴門十二勝 真景図巻
けさは 鳴門十二勝真景図巻です。
真景図巻の真景とは、
実際の景色を忠実に描いた風景画のことです。
この図巻は美術品としてだけでなく、
200年前の江戸時代中期の
鳴門の風景をつぶさに知ることのできる資料としても貴重な作品です。
鳴門十二勝真景図巻。
徳島藩12代藩主、蜂須賀治昭(はちすか・はるあき)の命により
御用絵師 鈴木芙蓉(すずき・ふよう)が描いたものです。
以来、蜂須賀家に代々名宝として伝えられてきました。幅30センチ、長さおよそ9メートルの巻物は
名勝鳴門の風景、十二場面で構成されています。徳島城博物館 学芸員 須藤茂樹さん
鳴門の渦潮、激流のところを描いた絵が一般的だが、激流もいろんな方向から描いていたり、内海・静かな鳴門の海の風景を描いていたりと様々な鳴門の海岸の持つ表情が描かれている。「真景図」というように真実の風景を写すということで大変精巧な筆致で実際の景色を描こうとしたのがよく見える
図巻は、大磯崎の場面からはじまります。
今の撫養町黒崎です。
横長の広大な画面に描かれているのは、
小鳴門海峡の荒波です。
冷静な観察と、正確な描写力で
うねりの刻々と変化してゆく様子が
見事に再現されています。
第二の場面は、岡崎海岸からのながめです。
さきほどとはうってかわった、おだやかな内海です。
図巻は、横長の広大な場面とこのように両脇をきりつめた
狭い場面とが、交互にあらわれる構成です。
中央に見えるのは、夫婦岩( めおといわ )です。
当時とかわらぬ風景が今も広がります。
図巻の作者 鈴木芙蓉はもともと、
中国の深山幽谷などを描いた「 南画 」の絵師です。
想像力あふれる大胆な画風で江戸画壇の一翼を担っていました。
その芙蓉に、藩主が真景図の制作を命じたワケ、それは蘭学の普及です。
解体新書の出版を契機に、
オランダからは西欧のすぐれた科学技術が導入されました。
地理学、測量術なども「実学」という名で
諸藩の大名たちにもてはやされました。
観察に基づいて事実を描く真景図は、
まさに実証性を重んじる時代の産物だったのです。
場面は鳴門海峡へと移ります。
大毛山からのながめです。
鳴門は江戸時代からすでに、
全国に知られた名勝として多くの見物客を集めていました。
潮の流れや渦潮は、
絵師にとっても格好の題材となった場面です。
図巻は最大の見せ場を迎えます。
海峡の激流です。
繊細かつ大胆なひと筆ひと筆。
中央付近の舟がいっそうの臨場感を演出しています。
構図、色使い、筆運び。
絵師としての技術をすべて駆使した芙蓉会心の作です。
大作を書き終えた芙蓉は巻末に、次のように記しています。
寛政丙辰、冬12月
うやうやしく厳命をうけたまわり描く。
この絵に対する芙蓉の真摯な姿勢が見て取れます
この図巻から70年後、
明治という新しい時代が幕を開けました。
鳴門十二勝真景図巻は、
日本が近代国家として歩みだすことを予見した作品でした。
徳島城博物館 学芸員 須藤茂樹さん今とみると計画が変わっているところもあると思うが、自然、知的な景観は刻々と変わっていくがこれから100年先、200年先の鳴門の風景、景観を考える上で材料を教えてくれると思う。
名勝鳴門を描いた、鳴門十二勝真景図巻。
江戸時代の風景を究極の写実でとらえた、ふるさとの宝物です。