2002/04/02
ふるさとの宝物
今月から、毎週火曜日のこの時間には
新しいコーナー「 ふるさとの宝物 」をお送りします。
県内には、寺院や仏像などの文化財のほか
史跡や天然記念物、あるいは祭りや伝統技法といった、
有形無形の宝物が数多くあります。
うつりかわる歴史の中でも
決して色あせることなく
光をはなちつづける宝物の中から
毎週ひとつをとりあげ
ご紹介してゆきたいと思います。
第1回は 徳島市の丈六寺 です。
別名、阿波の法隆寺とも呼ばれ
国や県指定の重要文化財を
数多く抱える文化財の宝庫です。
( VTR )( 音 トリキリ )
曹洞宗 丈六寺
寺の興りは 奈良時代、関東から来た尼僧が
この地で庵を結んだことだといわれています。
室町時代中期になって、
守護の細川 成之(ほそかわ・しげゆき)によって
禅宗の寺院にあらためられました。
丈六寺は建造物としては県内最古で
あるとともに、
寺全体が、
鎌倉・室町時代の 禅宗の建築様式を
色濃く残している点で 県内では他に例がなく
建造物はすべて国や県の文化財に
指定されています。中でもこの観音堂は、
国の重要文化財に指定されています。
どっしりとした二重屋根の
寄せ棟造りが 格式の高さを表しています。
平安中期の1056年に創立された観音堂は
時代とともに、何度か建て替えられました。
現在の建物は、
江戸時代前期の1648年に
阿波藩主、蜂須賀 忠英(はちすか・ただてる)が
建立したものです。
観音堂には、
二つの異なる建築様式が 混在しています。
建物を支える柱は
上下の端が丸く削り取られています。
「ちまき柱」と呼ばれるこの柱は
中国の「宋」から伝えられた建築様式です。
禅宗とともに取り入れられたことから
「 禅宗様式 」とよばれています。一方、垂木( たるき )は
奈良飛鳥時代、大陸からもたらされた
「 和様 」とよばれる建築様式です。
「禅宗様」と「和様」
大陸から伝わった 異なるふたつの建築様式が
見事な調和をみせています。( 音トリキリ )
中に安置されているのは
聖観音座像(しょうかんのんざぞう)です。
この仏像も、国指定の重要文化財です。
高さはおよそ3.6メートル。
立ち上がれば身の丈がおよそ4.8メートルの
一丈六尺 (いちじょうろくしゃく) になります。この大きさの仏像は一般に丈六仏 (じょうろくぶつ )とよばれ、寺の名の由来ともなっています。
観音像は、
平安時代の丸くやさしい体型を持ちながら
鎌倉時代の特長である、写実的で
人間味のある表情もたたえています。四国大学教授(日本中世文化史) 田中省造さん
京都や奈良に集中していた仏教が、平安時代後半になるとどんどん地方に広まり、豪族たちも立派なお寺を建て、立派な仏像をつくるようになる。この観音像もそんな時代背景があった。
観音像がもつ 蓮のつぼみは
悟りをまだ得られない、人間を表しています。
観音菩薩は
かざした右手で、いままさに
つぼみを開かせ
極楽浄土への悟りに導こうとしています。
観音像は完成当時、
全身を金箔でおおわれ
神々しいばかりの光を放っていました
( 音 トリキリ )田中教授
ちょうどお釈迦さまが亡くなってから2000年がたつ、末法思想、世も末になると考え、人々はこの世に絶望感があり、次の世は浄土に生まれ変わりたいというのが一般的になった。
末法の世、
ひとびとは観音像のまばゆい姿に
極楽浄土の世界を夢見ていたのです。
( ポーズ )
本堂の左手、
回廊の南側に建つのが「経蔵」です。
ここは、 多くの経典がおさめられた、
いわば図書館です。
入り口を飾るのは
「卍 つなぎ」の 桟唐戸(さんからど)です。
左右の壁には花灯窓(かとうまど )、
ここにも禅宗の建築様式が残されています。室町時代、
この建物は経蔵ではありませんでした。
もともとは修行僧のための「座禅堂」でした。
それを江戸時代中期の 1727年、
経蔵に改造したものです。
なかにある床が、座禅堂だったころの
名残をとどめています。改修の変遷を知ることができるため
経蔵は 歴史的に貴重で、
平成10年、
国の重要文化財に指定されました。
おさめられている経典は 二千点に及ぶ
一切経( いっさいきょう )です。
一切経は、
いまからおよそ400年前、中国から
伝わったものです。
釈迦(しゃか )の教えや戒律など
仏教全般の解説書として、これまで
大切に伝えられてきました。
経典がおさめられた
八角形の書架は輪転架ともよばれ
真ん中の軸を中心に回転します。
一回転させると
納められた経を全部読んだことと
同じ御利益があるといわれています。
戦国の世の 室町から
太平の江戸、藩政時代まで、
この寺は、細川、蜂須賀ら
時の権力者たちの手厚い保護のもと、
今日の姿をとどめてきました。曹洞宗 丈六寺。
春の木々に
その端正な美しさが映える、
ふるさとの宝ものです。