特集です。
今日の主人公は、日本各地を回っている、ある青年です。
(VTR)
「これは、観覧車と同じ作り。ま、水車なんだけど」
「わ、堅てぇ。」
「丈夫じゃなぁ」
「重さ?100キロぐらい」
「ええー!」
(スタジオ)
自転車に乗っていた男性は、土居一洋(ドイカズヒロ)さんといいます。
鳴門市出身なんですが、彼が引っ張っていたのは、『じてんしゃ図書館』といいます。
土居さんが、なぜ、何のために、じてんしゃ図書館を走らせるのか。
土居一洋という名の本を、紐解いてみましょう。
(VTR)

広島県、東広島市。
自転車をこぐのは、土居一洋(ドイカズヒロ)さん、30歳。
鳴門市出身です。
土居さんの自転車、少し変わっいてます。
何か引っ張っています。
いったい何なのでしょうか?


音トリキリ
(土居さんインタビュー)
「水車型の本棚です」
「子どもでもわかるような環境問題の本を乗せています」
「日本の古いものが好きで、水車型にしたらおもしろいかなぁって」
「これは“じてんしゃ図書館”です」
図書館というからには、もちろん本を貸し出します。
*音トリキリ
(子どもとのやりとり)
「ゆっくりでいいんで頑張って読んで」
「この本は、原子爆弾を受けた子どもの作文が…」
かりた本を返す必要はありません。
じてんしゃ図書館には、特別なルールがあるのです。


「読み終わったら、葉っぱをかいて、誰かに渡してください。」
「わかりました」
* 音トリキリ
(子どもインタビュー)
「ピカドンって名前がおもしろそうと思った。全部読めるようにがんばりたいです」
貸し出した本は、1000冊を超えました。
ぎこぎこと回る本棚の中に、ひときわくたびれた一冊がありました。
『百年の愚行』。

20世紀の人類の歩みを振り返った本です。
象徴的な100枚の写真は、土居さんに、人間が何をしてきたかを訴えました。
*
音トリキリ
(土居さんインタビュー)
「まず驚いた。
次にみんな知っているのかなと考えた。
知ってしまったからには、伝えなければ…」
大事なのは、今起こっていることを知ること。
そんな思いから、4年前の冬、当時住んでいた愛知県岡崎市を出発しました。
手作りのじてんしゃ図書館を引っ張って、東日本はほとんど廻り終わっています。
近畿地方の一部を経て、今は中国地方にまでやってきました。
*音トリキリ
(土居さんインタビュー)
「野宿は楽しい。なんでと聞かれても困るけど…」
道はアスファルト。
でも、平坦な道ばかりではありません。
車ならあっという間に上ってしまう
小さな峠の頂上が、ようやく見えました。
きれいな川を見つけると、洗濯をします。
土居さんは、なんとなく日本各地を回っているわけではありません。

実は、全国におよそ3500あるという公立の図書館を訪ねているのです。
旅の原点である『百年の愚行』を、蔵書としてほしい。
残念ながらこの日訪ねた図書館は休館日でした。
対応した公民館の職員に事情を話し、手書きの手紙をことづけました。
*音トリキリ
(公民館長さん)
「子ども図書館なら…」
*音トリキリ(電話)
「河内公民館の緒方です…」
* 音トリキリ(館長さん)
「開いとるようですけん…」
必ずしも、親切な対応をしてくれるとは限りません。
でも、土居さんの熱意に、誠意を持って応えてくれる人もいます。
紹介された図書館では、さらに驚きの結果が待っていました。

*
音トリキリ(司書とのやりとり)
「町の人にも知ってもらうために全国の図書館を巡っているんですが…」
「おいてますよ」
*音トリキリ(司書が案内)

*音トリキリ
(土居さんインタビュー)
「ありましたね。ごく稀にあります。
あるのは…いいことです」
* また走る
土居さんが、必ず立ち寄る場所が図書館以外にもうひとつあります。
書店です。
本を貸し出してしまったら、水車の棚はからっぽです。
蔵書を補充する必要があるのです。

そしてまた、声をかけられました。

*
音トリキリ
「回覧板のように回していただければ…」
「返さんでええんじゃね」
* 音トリキリ(女性インター)
「絵手紙の会の教室から教室へ…子どもや孫が将来幸せでないと困りますもんね」
*音トリキリ(土居さんインター)
「うれしいですね。頑張ろうと思いますね」
(スタジオ)
土居さんが回った公立図書館は、2030を超えたということです。
どうですか?
さて、土居さんがなぜ、じてんしゃ図書館を走らせるのかわかったと思いますが、知れば知るほど疑問点も増えて…きませんか?
そうですよね。
資金はどのようにしているんでしょうか?
野宿しているとはいえ、必要最低限の生活費もかかりますし、本代も莫大なものになりますよね。
ご家族も気になりますよね。
ご両親は心配ではないんでしょうか?
では、土居さんの新たなページを見てみましょう。
(VTR)

去年の12月。
舞台は福井県福井市に移ります。
*
音トリキリ
(土居さんアルバイト)
「藁もあげときますか?」
土居さんがいました。
傘ではなく、ヘルメットをかぶっています。


土居さんは、茅葺の仕事を手伝っていました。
彼の傍には、水車型の本棚は見当たりません。
じてんしゃ図書館は、どこに行ってしまったのでしょう。
*
音トリキリ
(土居さんインタビュー)
「じてんしゃ図書館は広島です」
図書館の運転資金が尽きたため、“出稼ぎ“に来ているのです。
冬だから旅を休んでいるわけではありません。
じてんしゃ図書館を走らせて、お金がなくなれば働いて…その繰り返しです。
* 大鳴門橋
その年末。
土居さんは、徳島に帰ってきました。
日本古来のものが好きという土居さん。
普段着も下駄と着物です。
*
音トリキリ
(実家に戻る)
「ただいま〜」
一年ぶりの我が家です。
*音トリキリ
(父親)
「お帰り。着物で帰ってきたん?」
突然の帰省はいつものことです。
母親はたまたま不在、姉と妹は、既に家を出ています。
父親が一人、息子の帰りを待っていました。

*音トリキリ(父親と)
「よう北海道で熊に食われなんだな。
沖縄はハブに気をつけろよ」
一年の間に届いた土居さん宛ての郵便物。

土居さんの息災を家族に伝えます。
*
音トリキリ
(土居さん読む)
「倉吉?倉吉の図書館長からや。
“(百年の愚行)購入することがきまりました…”」
届いていたのは、ハガキだけではありません。

*
音トリキリ
(土居さん)
「あー!送ってくれたんや…」
人々の心の中を走りぬけてきたじてんしゃ図書館。
でも親としたら、やはり心配です。
*
音トリキリ
(父親)
「仕事しよるかと思ったら、北海道からいきなり手紙くるし。
でも、ようやっとると思う。」
3月。
土居さんは、広島に戻りました。

*
音トリキリ
(土居さん)
「うわっ」
半年ぶりの自転車との合流でした。
タイヤのパンクを治したら、運転再開です。

ペダルを踏む足は、力強く、迷いがなく…

もっと簡単な方法があったかもしれません。
でも不器用な彼は、この道を選びました。
じてんしゃ図書館。
それは名もなき青年の、のメッセージです。
(スタジオ)
2005年1月の愛知県岡崎市に始まった土居さんの全国行脚なんですが、ご覧の地図の緑の部分は既に廻り終えた部分です。

そして取材をした10日前は、広島県東広島市だったんですが、今はどこまで進んだんでしょうか?
実は、土居さんと電話がつながっています。
土居さん、おはようございます。

電話インタビュー
土井一洋さん
この後も事故などないよう、気をつけて旅を続けてください。
ありがとうございました。
きょうは、じてんしゃ図書館についてお伝えしました。