( VTR )
大泉さんのアトリエは徳島市応神町、吉野川橋のすぐ北側にあります。

取材に訪れたこの日、大泉さんは吹きガラスの製作を行っていました。
宮城県生まれの大泉さんが徳島にアトリエを開いたのは28歳の時。
以来、30年間この場所でずっとガラスを作り続けています。
アトリエ横の展示室には、青一色の空間が広がっていました。

大泉さんは、23歳の時に沖縄で琉球ガラスと出会い、現地の工房で4年間、修行時代を過ごします。
その後独立し、さらに、結婚をきっかけにして徳島に移り住むことになりました。
吉野川の雄大さが気に入って、この場所にアトリエを構えた大泉さんですが、若い無名の作家がガラスで生計をたてられるようになるには色々な苦労がありました。

東京で個展を開く機会にも恵まれ、大泉さんが作るコバルトブルーの器は次第に世間の評価を高めていきました。
しかし、大泉さんは「作品はお客さん本意のもの」との信念を今も崩していません。
そんな大泉さんが吹きガラスとともに取り組んでいるのが、伝統的なガラスの製法「パートドヴェール」です。
石膏で作った鋳型(いがた)の中に細かく砕いたガラスを敷き詰め、高温の釜で溶かしてからゆっくり冷やして固めるパートドヴェールは、様々な形の作品を作ることができ、吹きガラスにはない独特の風合いが生まれます。
この日は、パートドヴェールの釜入れが行われました。
ひと月かけて自ら削った石膏の型に細かく砕いたガラスの粒を敷き詰めます。
陶器と違ってガラスは、作者がイメージした通りの色と模様に仕上げることができるそうです。
ガラスを並び終えると電気釜で数日かけて温度を1150度まで上げます。
一度に釜に入る作品は、小皿を除くと6個から8個程度。
温度はコンピュータが管理し、いちど扉を閉めると常温に戻るまで開けることはできません。
後は待つだけとはいえ、なんとなく落ち着かない大泉さんです。
大阪の中心地に店を構える工芸店「ようび」は、いわゆる作家物の食器類を扱う専門店です。
店主の真木啓子(まきけいこ)さんは、この道のプロフェッショナル。

全国の工芸作家から絶大なる信頼を寄せられています。
一流の料亭や旅館と取引がある「ようび」で作品が扱われることは、作家にとって大変なステイタスです。
釜入れから4日後。
アトリエを訪ねると黙々と薪割りをする大泉さんの姿がありました。
なんとなく不機嫌そうなその訳は、電気釜の扉を開けてみるとわかりました。
ぜひ成功させたかった大きめの作品の石膏が割れてしまい、中のガラスが流れ出したのです。
成功しても失敗しても石膏の型は一度しか使えません。
気を取り直して一から作り直しです。
前回の失敗から2か月たって、ようやく「次の釜を開ける」と大泉さんから連絡がありました。
前回は失敗した大きな作品の仕上がり具合をチェックします。
釜から出した後は、グラインダーなどで削って形を整え、ヤスリで磨いてようやく完成です。
仕上げのこの段階でも簡単に割れたり傷がついたりするので気を抜くことができません。
「自分の作品に満足したら終わり」そう語る大泉さんは、これからも
自分らしい『形』を追求しながらガラスを作り続けます。