徳島県は全国有数のタケノコの産地です。
しかし、ここ10年ほどでタケノコの生産量が大きく落ち込んでいます。
こちらをご覧いただきましょう。
これは県内全体のタケノコの1年後との生産額を表したグラフです。
タケノコは表年と裏年があり1年ごとに出荷量が異なりますが、
平成6年には15億35000万余りだったのが、
おととし平成15年には3億3000万円、
わずか10年に5分の1にまで落ち込んでいます。
その結果、人の手が加えられず放置され荒れた竹林が増加しています。
これにより今、里山に様々な問題が起ころうとしています。
今朝はこの問題について考えます。
ではまずは荒廃した竹林で今、何が起きているのかご覧いただきましょう。
(VTR)
「里山」
日本語大辞典には
「人里近くにある山」と記されています。
この里山にある竹林に今、異変が起きています。
(現場リポート)
・近くで見ると竹が黄色く枯れている
幾重にも折り重なるように倒れたままの竹。
一体、どれだけの期間人の手が加えられていないのでしょうか。
竹林は鬱蒼とした藪のような状態になっていました。
(竹林)
全国一のタケノコの産地、阿南市新野町。
ここでタケノコを生産する酒井忠勝さん66歳です。
酒井さん宅では親の代から新野町でタケノコを生産しています。
(タケノコ掘り出す)
阿南市でのタケノコ生産の歴史は古く、中国から1806年に孟宗竹がこの地に持ち込まれたのが始まりとされています。
タケノコ農家は例年11月下旬頃から「早掘りタケノコ」として市場に出荷し、最盛期を過ぎ市場の値段が下がると今度は缶詰の原料用として出荷していました。
ところが近年、安い中国産に押され原料用のタケノコの価格は現在キロ当たり30円前後と4分の1にまで落ち込みました。
(酒井さんインター)
・この集落では殆どが筍を生産していたが今は半分に
酒井さん自身も栽培面積を1・5ヘクタールから1ヘクタールへと3分の2に縮小しました。
(酒井さんインター)
・今、掘っているのはみんな60代。若い人はやっていない
・重労働だし、年寄ったらできる仕事ではない
(猪俣さん、竹林を歩く)
「徳島の自然林を守る会」会長の猪俣栄一さんです。
猪俣さんは自宅近くのこの里山をよく訪れますが、年々荒廃が酷くなっていると話します。
(猪俣さんインター)
・枯れた腐った竹が随分ある
・竹の寿命は短いのでだんだんひどくなる
竹は他の樹木に比べ寿命が短く15年程度で枯れていきます。
この里山の竹林にはすでに枯れて倒れた竹が折り重なっていました。
(地元住民の声)
・30年前まではここらは雑木だった
30年程前までは殆どが雑木だったとというこの里山。
竹に四方を囲まれて朽ち果てた樹木がその名残をとどめていました。
(猪俣さんインター)
・日陰になり枯れるこのあたりの広葉樹の運命
竹は地下茎を伸ばして周囲にタケノコを生やします。
そしてタケノコはわずか3ヶ月ほどで竹に成長します。
大きいものでは高さが20メートル近くにまでなるといいます。
その結果、もともと生えていた樹木は日光を遮られ、その上養分を吸い取られて枯れてしまいます。
こうして竹林は放置しておくと年々その面積を拡大していくのです。
県によると県内の竹林の面積は2121ヘクタールで10年前に比べ135ヘクタール増えています。
竹林が拡大し樹木にとって変わることにどんな問題があるのか、専門家に聞きました。
(広島大学・中根周歩教授)
・竹は森林に比べ根が浅く、保水力が弱く、土砂の崩壊を抑える力が弱い
・竹は人家の裏山に植えている場合が多い
・竹林が斜面の上まで拡大した場合、非常に危険になると考えられる
(石井町)
石井町内の里山です。
竹林の斜面が幅25メートルにわたって崩れていました。
(猪俣さんインター)
・ここがもともと崖だった
・上を向いて生えていた竹が台風による豪雨で斜面が崩れ竹が90度に傾いている
この現場は去年の台風で崩れたといいます。
竹は根元近くから切り取られていましたが、
明らかに密生し事実上放置された竹林だったことが伺えます。
斜面崩壊の原因が何だったかは詳しくはわかりませんが、
90度に傾いたこれらの竹は私たちに何を語りかけているのでしょうか?
(スタジオ)
さてこちらをご覧ください。
タケノコの生産額はこの10年間で15億円から3億円とおよそ5分の1にまで落ち込んでいます。
これに対して竹林面積は1986ヘクタールから2121ヘクタールと逆に増えているんです。
これはタケノコの値が安くなり竹林が放置され山に人の手が入らなくなり、その結果、竹がもともとある雑木林などを侵食し
広がったためと考えられます。
広がる一方の竹林を食い止める手立てはないのでしょうか?
(VTR)
かつて竹林はタケノコという食料を供給し阿南市内を中心とする農家にとっては貴重な生活の糧となっていました。
親竹は5、6年でタケノコを生産する力を失いますが、建築用資材等として活用され、人々の生活に密接に関わっていました。
(四国放送「ふるさとの顔」より)
・竹やぶ、タケノコ、親竹という東洋的コンビナートが誕生するわけです
ところが、竹に変わる新しい素材が増え近年竹の需要は著しく落ち込みました。
これは県内の竹材の生産額を1年ごとに現したグラフです。
昭和50年には1億7000万円あったのが今は10分の1以下のわずか1200万円となっています。
(積んでいる青竹)
阿南市にある阿南竹炭生産組合です。
組合長の岡川雄洋さんです。
(岡川さんインター)
・銀色に光るのがいいやつ
・最初はどうしていいか分からなく失敗重ねた
岡川さんはもともとは竹材業を営む3代目です。
ところが竹材の販売が振るわなくなり平成7年に同じ竹材業者やタケノコ農家5人で竹炭を生産する組合を発足させました。
材料となる竹は地元阿南市の農家から買い取り、年間に12トンの竹炭を生産しています。
発足当初は竹炭ブームも手伝って多くの注文も舞い込みました。
しかしここ数年は値段の安い中国産におされ気味だといいます。
(岡川さんインター)
・今はピーク時の半分
・いい炭を焼きたいと思って焼いている
阿南市福井町のこちらの会社では竹からある物を取り出す開発に成功しました。
(大西和男社長インター)
・これは竹から取り出した繊維なんです
大西さんは阿南市内で溢れている竹をなんとか活用できないかとして今から5年前にこの会社を立ち上げました。
およそ3年かけて開発したのがこの筒状の巨大な機械です。
この中に青竹を入れ、高温と高圧で蒸すことで竹の繊維を取り出すというものです。
(水蒸気が吹き出す)
(大西さんインター)
・繊維は臭いを吸着する効果があり老人特有の臭いを吸収する
・将来的には介護用品にも
この竹から取り出した繊維はメーカーに持ち込まれ、一部が商品化されていますが、本格的な開発はこれからだということです。
(広島大学・中根教授インター)
・竹をたくさん使う用途が竹林の拡大に匹敵する用途がないと竹林の拡大は収まらない
かつて人々を潤し生活に欠かせなかった竹、しかし生活様式の変化や外国からの安い輸入物に押され、その需要は伸びなくなりました。
その結果、人の手が加えられなくなり荒廃し続ける竹林。
この竹林問題をどうすれば解決できるのか、抜本的な解決方法は見つかっていません。
(スタジオ)
こちらが取材しました竹を利用しての商品です。
こちらが竹炭です。
こういう銀色に光る炭がいい品質だということです。
そしてこちらが竹の繊維から作った商品です。
臭いを吸着する効果があるということです。
こちらが綿と繊維を混ぜてて出来たフトンの綿、そしてこちらがベッドのマット用シートです。
隣は靴の中敷です。
県内では民間レベルで様々な取り組みが進められていますが、今の段階では竹林の拡大を防止するまでの需要は残念ながらないということです。
例えばこの竹炭を生産している阿南竹炭生産組合では年間12トンの竹炭を生産していますが、年間で5000本程度の竹を消費することにしかならないということです。
徳島県に限らず西日本の各県では竹林が荒廃し拡大している問題を抱えています。
こちらをご覧いただきましょう。
例えばお隣の高知県では竹を加工し床のフローリング材として活用する試みが行われている他、広島県では竹炭の持つ保水力を生かして
屋上緑化の保水材として活用するための研究が広島大学を中心に進められています。
しかしこちらも現段階では竹林の拡大を食い止めるまでには至っていないのが実情です。
こうした問題について行政はどう見ているのでしょうか?県の担当者に話を聞きました。
(VTR 林業振興課へのインタビュー)
従来、里山は人の手が加わり明るい雑木林
それが手入れされず藪化すればいろんな物が住めなくなり防災面でも機能が低下する
これまでの対策としては保安林に指定したところは行政が管理できるがそれ以外は放置状態になっている
(スタジオ)
県によりますと例えば、竹林を保安林に指定すれば、国や県がキチンと管理できるんです。
ですが保安林にしちゃうと例えば宅地に開発するなど他の目的で利用できなくなるんです。
このため里山に関しては保安林に指定することへの所有者の理解がなかなか得られず、手の施しようがないとしています。
とはいえ竹林が荒廃し拡大することによって里山の自然が失われ、防災上も危険だという指摘があります。
知事自身、最近良く「一石二鳥ではなく三鳥、四鳥」の効果を持つ施策を実施していくと話していますが、
まさにこの竹林問題はうってつけの事業ではないでしょうか?
荒廃した竹林の拡大を食い止める積極的な取り組みを期待したいと思います。
けさは荒廃し拡大しつづける竹林問題についてお送りしました。